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『半分、青い。』最終回を観終えて

久々の更新。
息つく間もなく台風や地震など、大きな災害が各地で発生し、
自分が被災しているわけではないのになんだか気分が落ち込んで、
ブログを書く意欲を失っていた。
だからといって別にテレビを見てなかったわけではなくて、
『半分、青い。』もずっと観ていた。
先日最終回を迎えた
この朝ドラについて何か書かずにいられなくなった。
書いていたらすごく長くなってしまった。
読むのがご面倒でなければどうぞ。




完走した。
しかし、なんと気力を消耗させられる朝ドラだったことか。
このドラマで描かれたのは、以下のようなものであった。

主人公スズメが、脚本家がいうところのソウルメイトとなる
律と、同じ日のほぼ同時刻に、同じ産院で母の胎内にいるところから物語が始まる。
片耳失聴、律との微妙で曖昧な関係、さまざまな親子の関係、
漫画家修業から漫画家を廃業、100均、五平餅屋、
おひとり様メーカーを経て扇風機の発明(?)に至るまでの職業の変遷、
結婚、出産、離婚、母の病、子どものいじめ問題、親友の震災死。
といったことを経て、結局妻子と別れた律とお互いの気持ちを確認しあう。
まあ、だいたいこんなところか。
引っかかること全部を挙げてたらきりがないので、
どうしてもというものだけ書き残しておく。
一つは、花野のいじめ問題についてスズメが行った決断について、
もう一つは、スズメと律との関係性についてである。

あなたは逃げるのではない。正しい場所に行くんです。
目まぐるしく起こる出来事の中で、子どものいじめ問題と
親友の震災死は最終週に同時に発生する。
スズメは、花野がいじめに遭っていることを担任から聞き、
すぐに転校させることに決める。
私は、ここに激しく引っかかる。転校そのものは別に悪いことではない。
できうる限りの対策を尽くしても状況が改善せず、
被害児童の心身に重大な危機が迫っていることが
予測されるということならば、
保護者がそうした決断を下すのを否定する理由は何もない。
しかし、担任から事情を聞かされてから、学校やいじめに加担する児童、その保護者らに
なんの働きかけもせず、「いじめる奴らには何言っても無駄」と勝手に決めつけ、
すぐに転校という解決法に結びつけようとするスズメには違和感しかなかった。
そもそも、転校先の学校でいじめがないという保証はあるのか。
このいじめ問題の具体的な顛末はこういうことである。
地震で机の下に身を隠した小学2年の花野が、揺れが収まり机の下から
はい出ると、床が濡れていた。それを見たいじめっ子の男子が「漏らしてる!」と
からかい始める。
そこにすかさずある女の子が助けに現れ、いじめっ子にパンチを浴びせて撃退。
しかし、問題はそれだけで解決せず、花野は黒板にいたずら描きされたり、
他の女子たちからは無視されたり、掃除の際にカバンにごみを入れられたりする。
カバンにごみは、低学年のいじめにしては確かに度を超しているかもしれない。
このような目に遭えば、花野が学校に行きたがらなくなるのも無理はない話だ。
しかし、こうしたいじめは、時間が経てば自然と解消する可能性もある。
また、いじめは確かによくないが、まだ低学年であるいじめ加害者の
人間性を完全否定してしまうのは教育上どうなのだろう?
花野が転校したあと、加害者のなかには罪の意識にさいなまれて
ずっと悩み続ける子もいるかもしれないのに。
しかも、児童間でこういう問題が起きていることを教員が把握している
以上、保護者を含めた話し合いなどを重ねて解決の努力をするはずだ。
転校は、そのうえで改善しない場合に残しておく最終的な手段では
ないだろうか。
このお漏らし~いじめの件において、
花野の担任が問題の解決をすべて家庭に丸投げしたわけでもないだろう。
仮にそうだとしても、教育委員会に訴えるなど、保護者としてやれることは
あるはずだろう。
そういう努力や親としての葛藤をすっ飛ばし、幼いわが子に転校という解決案を
提示し、
「あなたは逃げるのではない。正しい場所に行くんです。
そして、する必要のない戦いだ。だから場所を変える。―」
とドヤ顔で言われても、いったい何を言っているんだ?としか思えないではないか。
カッコいいセリフを思いついた脚本家が、どうしてもこのセリフを
スズメに言わせたいばかりに
このエピソードを最終週になってねじ込んだのではないかと勘繰りたくもなる。

次に、このドラマの最大のモヤモヤの元となっている
律との関係について。

どうしても、律を悪者にしたくないんだね。
最終的に、誰にいちばんいら立ったかといえば、
スズメ以上に律なのだった。
いっそのこと、律が正人みたいにチャランポランの遊び人という
人物設定だったら、ここまでモヤモヤしなかったのに。
いちばん寒気がしたのは、スズメを守るのが俺の使命なんだ。
40年経って気がついた、というセリフだ。
いったい、どの口が言っているんだと言いたい。
高校のころにドラマティックな出会い方をした清に東京で再会して
運命的なものを感じたことはもうなかったことになっているのか。
彼らの付き合いがどんなものだったのかは、視聴者の想像にまかされた。
清とはかれこれ3年付き合ったとナレーションがあっただけで、
律が自分の口から一切語ることは
なかった。
その後、唐突にスズメにプロポーズして断られた律は、しばらくして
同僚のより子と結婚する。
たとえより子に押し切られての結婚であったとしても、結果離婚しても、
律は子どももいる父親。
清といるときも、より子や翼といるときも、
いちばん大切だと思っていたのはスズメのことだなんて、
正人みたいないい加減な男がいうなら仕方ないなで流せても、
律には言ってほしくなかった。
思っていても、言葉に出してほしくなかった。

そしてとにかく、清とより子のキャラ設定からしてあざとい。
弓道少女の清は、その爽やかで凛とした美少女という第一印象を
大きく裏切り、実は気性が激しく異常なほどに嫉妬深い女。
付き合っても長くはもたないだろうというのは誰でも想像がつく。
律の勤める大企業の受付嬢だったより子は、一面識もないスズメの友人に
「パン女」などと呼ばれ、イケメンでエリートの律との結婚をもくろむ
打算的な女だと勝手に決めつけられる。
スズメではなくユーコやボクテに言わせているところがまたいやらしい。
結局より子自身が本当に打算で律と結婚したのかどうかは、
一切語られることはない。
教育ママで一人息子にまで怖がられるなど、
より子は一方的に悪く描かれ、梟町では完全にアウェーな存在。
律の父母にもやんわりと煙たがられ、離婚へのお膳立てがわかりやすすぎる
くらいにわかりやすく描かれる。
しかも、結局離婚を切り出すのはより子の方で、すぐに別の相手と再婚。
律は最大限歩み寄ろうとしたことを強調し、より子の再婚に落ち込んでいるかのように
描いてるのがまた腹立たしい。
何が何でもスズメと律を悪者にしてなるものか、と思ってこんな風に書いたのだったら、
全くの逆効果だ。
脚本が律を悪者にしないようにすればするほど、
かえって律がいやな奴にしか思えなくなってきた。
本当はしめしめと思っているくせに。
自分は悪者にならずに厭な女と別れられたと。
「スズメのことをいちばんに思っているということに今まで気づいていなかった」
というのだって、言い訳にしか聞こえない。
周りの人間たちはみなわかっているのに、律だけがわかっていないふりを
するのが卑怯。
「俺とスズメの歴史をお前が語るな」だの、
「スパロウリズムは俺とスズメの二人の会社」だの、
言われた正人や津曲は、どんな風に感じるかということに思いが及ばないのだろうか。
きっと、二人とも疎外感を感じたと思う。
律はスズメのことを無神経といったけれど、律の無神経ぶりだって
相当なものだと思う。いや、自覚がないぶん律の方がよほどタチが悪いかも。
もう、お似合いの二人だってことだと思うことにし、
無理やり納得したようなラストだった。

最後にひとつ、これだけは。

ふつーにしゃべれ。


主人公やユーコらのしゃべり方がもっとまともなら
もう少しドラマの印象がよくなった可能性はあると思う。
「了解いたした」だの「ふぎょぎょ」だの、
そりゃ子役時代は別にいいと思うよ。
しかし、あのしゃべり方が通用するのはせいぜい高校まで。
というか、中学くらいになれば自分で違和感覚えて自然に
やめると思うんだけどね。
社会に出たらいくらなんでも改めましょう。
あと、「実生活でこんなこと言うか?」と秋風先生に言わせてるにも
かかわらず、このドラマではそういうリアリティ完全無視の
大げさなセリフのオンパレードなのはいったいどういうことだ。
ツッコミ待ちなの?

もしもスピンオフとかあるのなら、
清やより子(と翼)のリベンジ劇がみたい。
もちろん、脚本家は別の方にお願いして。

永野芽郁さん、佐藤健くんなど、役者さんたちに
悪印象は持っていないですよ。
あと、何といっても秋風先生を演じたトヨエツは素晴らしかった。
主題歌も好きだった。
何はともあれ、
お疲れ様でした。

朝ドラは、半年という縛りを考え直してもいいのでは。
それから、以前、『ひよっこ』の感想で、ベテランの脚本家だから面白い朝ドラになった
といった気がするが、間違っていました。すみません。
いかにベテランといえど、朝ドラ枠はやはり特殊なんだなと認識を新たにいたしました。

長々しい駄文におつきあいいただき、ありがとうございました。


by porcupine2013 | 2018-10-01 17:00 | 連続テレビ小説・半分、青い。

善く隠れる者は善く生きるbyオウィディウス「悲しみの歌」


by porcupine2013